「ちょっとそこの本、こっちに上げてもらえませんか?」
「え?」
おれの名前は勾坂一重。
自分で言うのもなんだが、成績は優秀、誰からも好かれる好人物だ。
今日は借りていた本を図書室に返しにきたんだけど……
「ちょっとそこの本、こっちに上げてもらえませんか?」
上のほうから声がする。振り返ってみると彼女は脚立の上にいた。
そしてこっちを向かずに声を掛けてくる。
こういうときは愛想よくするのがおれのスタイル――
だから、にっこり笑ってみせる。
「うん。いいですよ。ここのカートの?」
「ええ。そうです。すいません」
ちょっと見た顔だ。確か同級生。確か同じ3年生。
一緒のクラスじゃないんで名前は知らない。
おれには見向きもせずに本を整理している。
「どれ? ぜんぶ?」
「ええ、ぜんぶ。ごめんなさい、使い立てしちゃ……って」
こちらを振り向くなり、彼女はフリーズした。
「な、何だろう? これじゃなかった?」
「……いいえ。ごめんなさい」
「わたし、あなたが嫌いなの。『勾坂一重』くん」
「嫌いって……どうして? 理由は?」
「特にありません、理由なんて。強いて言えば『あなたの名前が嫌いなんです』」
冷たい声でそう言い残して、彼女は歩み去っていった。
……おれ、彼女に何かした?
※Windows 9x(Windows 95, 98, 98SE, Me), サーバ OS(Windows 2000 Server,
Server 2003, Server 2008), 64ビット版Windows(Windows XP x64 Edition, Windows
Vista 各64ビット版) および Windows XP Media Center Edition での動作は保障外